地域移行・地域定着支援の充実強化に向けた事例収集とガイドライン

地域移行・地域定着支援の充実強化に向けた事例収集とガイドライン

地域移行・地域定着支援の充実強化に向けた事例収集とガイドライン

2012年3月

現在、精神障害者の地域移行にかかる事業として地域生活支援事業における「精神障害者地域移行・地域定着支援事業」が全都道府県において実施されています。本事業は、社会的入院の解消を図る国の方針を背景に、国の補助制度として各自治体による取り組みにより推移しています。

その実態は、地域間での取り組みに規模・内容ともに大きな隔たりが生じています。そして2012(平成24)年度からは補助事業として行われてきた地域移行支援、地域定着支援、住居入居等支援事業(居住サポート事業)が、障害者自立支援法による個別給付事業として再編され、一部事業が補助事業として実施されるという新たな展開を迎えることとなりました。

地域移行支援は住まいの確保が大きな課題であり、物件確保に関して、情報収集や入居あっせん等の種々の調整をはじめとする「入居支援」が肝要です。そして入居後の暮らしの維持継続が必要であり、永続的な支援を保障するシステムが必要となります。したがって街での暮らしの永続性を担保するには、従前からの居住支援系事業(グループホーム等)ならびに居住サポート事業などの個別在宅生活を支える事業の活性化がとても重要です。しかし地域間格差は歴然たる事実で、居住サポート事業の実施も全国市町村のうち13%の実施にとどまっており(2011(平成23)年厚生労働省発表)、街での暮らしの支援はぜい弱なままとなっています。

これからの事業展開を図る際に、地域移行・地域定着支援、そして居住サポートの実態やその手法の要点を先進的取り組みの中からくみ取ることと、内容を精査し、実践につながるよう、時宜を得た臨場感のある情報を配信することが極めて肝要という認識にたち、2011(平成23)年度下期より検討チームが立ち上げられ、厚生労働省の研究事業として本調査研究ならびにガイドライン策定に着手した次第です。

具体的には、全国5か所の先駆的な地域(自治体や圏域)に対するヒアリング、実地調査をもとに、精神障害者への支援に限らず、入所型施設に長期に入所している障害者への支援活動も視野に入れ、実践の実相を把握する中で、真に必要な地域移行とは何か、また、目的を達成する上で必要となる事業実施の仕組みや仕掛け、さらにその地域の文化に沿った工夫やアイデアなどについて精査しました。

調査により集積された情報の分析を通じて編纂された本ガイドラインが、現状を捉え、限界をこえ、そして全国での展開に弾みをつける一助となれば幸甚に存じます。